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小説「新・人間革命」

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薫風12

 三賀正夫は、九州歯科大学の二年先輩にあたる学会員の恒光吉彦と、「どうすれば無歯科医村をなくせるか」について、語り合ったことがあった。

 「国の制度を変え、歯科医のいない地域への勤務を義務づけるべきだ」とする三賀の意見に対して、恒光は言った。

 「制度を変えるだけでは、この問題は解決しないだろうね。いやがる人間を強制的に辺地に行かせたとしても、現地の人たちに本当に喜んでもらえる医療ができるだろうか。

 医師が、その仕事に大きな意義を見いだし、自分の使命であると自覚して、本気になって取り組むことが、最も大事な要件じゃないかね。つまり、医師自身が変わらなければ、本当の解決はない。

 もっと言えば、制度の改革だけでは、人間の幸福を実現することはできないということだ。たとえば、現代は、主権在民だし、身分制度はなくなった。しかし、本当に皆が平等かというと、かたちを変えて、さまざまな差別があるじゃないか。また、公害の蔓延が人間を脅かしているが、その本質的な要因は、人間の欲望にある。それに、人間不信や疎外感、孤独感といった苦悩は、むしろ激しさを増してきているじゃないか。

 政治も、経済も、産業も、教育も、すべて人間のもたらした産物だ。したがって、何を改革していくにせよ、根本は、一切の創造の主体者である人間自身の変革がなくてはならない。その人間革命の道を教えているのが日蓮大聖人の仏法であり、それを民衆運動として展開してきたのが創価学会なんだよ」

 人間革命の必要性は、三賀も納得することができた。しかし、“創価学会はいやだ”と思った。彼の父親は、新潟で呉服店を営んでいたが、父の実家は他宗派の寺であった。その父から、「学会は檀家を奪う、とんでもない宗教だ!」と聞かされて育ち、いつの間にか三賀も、そう信じ込んでいたのだ。

 偏見とは、認識なくして評価することだ。その偏見との戦いが、仏法対話なのである。

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